特別養子縁組の手続きガイド 条件・流れ・支援制度
特別養子縁組とは
特別養子縁組は、子どもの福祉のために、実親との法的な親子関係を終了させ、養親との間に実の親子と同様の親子関係を成立させる制度です。1988年に民法の改正により創設されました。
通常の養子縁組(普通養子縁組)では実親との親子関係が存続しますが、特別養子縁組では実親との法的な関係が断たれ、養親が唯一の法律上の親となります。戸籍上も「養子」ではなく「長男」「長女」と記載されます。
この制度は、実親による養育が困難な子どもに安定した家庭環境を提供することを目的としており、子どもの最善の利益を最優先に考えて運用されています。年間の成立件数は約700件前後で推移しています。
成立の条件
特別養子縁組の成立には、法律で定められた複数の条件を満たす必要があります。2020年の民法改正により、一部の要件が緩和されました。
養親の要件
- 配偶者のある者であること(夫婦共同で縁組する)
- 養親の一方が25歳以上であること(他方は20歳以上)
- 子どもを適切に養育できる環境が整っていること
養子の要件
- 原則として15歳未満であること(2020年改正で6歳未満から引き上げ)
- 15歳以上の場合、本人の同意が必要
実親の同意
原則として実親の同意が必要です。ただし、実親による虐待や養育放棄など、子どもの利益を著しく害する事由がある場合は、実親の同意がなくても成立させることができます。
試験養育期間
特別養子縁組の成立前に、6か月以上の試験養育期間(監護期間)が必要です。この期間中、児童相談所の担当者が定期的に家庭を訪問し、養育状況を確認します。
手続きの流れ
2020年の法改正により、特別養子縁組の手続きは2段階の審判制度に変更されました。これにより、養親の負担軽減と手続きの円滑化が図られています。
第1段階:特別養子適格の確認
児童相談所長または養親候補者が家庭裁判所に申立てを行い、子どもが特別養子縁組にふさわしいかどうか(実親の同意の有無、養育状況など)を審理します。この段階では、実親の同意の撤回期限(2週間)も設定されます。
第2段階:特別養子縁組の成立
養親候補者が家庭裁判所に申立てを行い、養親と子どもの適合性が審理されます。試験養育期間の状況報告をもとに、縁組の成立が認められると審判が確定し、法的な親子関係が成立します。
手続きの期間
申立てから成立まで、通常1年から1年半程度かかります。試験養育期間の6か月に加え、裁判所での審理期間が必要なためです。弁護士に手続きを依頼する場合の費用についても事前に確認しておきましょう。
民間あっせん機関
特別養子縁組のあっせん(養親と養子の引き合わせ)は、児童相談所のほか、都道府県知事の許可を受けた民間あっせん機関が行っています。2018年に施行された「養子縁組あっせん法」により、民間機関の許可制と適正な運営が法的に担保されています。
民間あっせん機関の役割
- 養親候補者の登録・審査・研修
- 実親(生みの親)への相談支援
- 養親と養子のマッチング
- 縁組成立後のアフターケア
費用について
民間あっせん機関を利用する場合、手数料が発生します。金額は機関によって異なりますが、養子縁組あっせん法により上限が定められています。一部の費用については、国の「養子縁組民間あっせん機関助成事業」による補助が受けられる場合があります。
機関の選び方
必ず都道府県知事の許可を受けた機関を利用してください。許可機関の一覧はこども家庭庁のウェブサイトで確認できます。複数の機関に相談し、支援体制や方針を比較検討することをお勧めします。
養子縁組後の支援
特別養子縁組が成立した後も、養親と子どもへの継続的な支援が重要です。縁組後の養育には、通常の子育てとは異なる特有の課題が生じることがあります。
真実告知(テリング)
子どもに対して、養子であることをどのように、いつ伝えるかは養親にとって大きな課題です。専門家の多くは、子どもが自分の出自を自然に受け入れられるよう、早い時期から年齢に応じた方法で伝えることを推奨しています。あっせん機関や支援団体が真実告知に関する研修やカウンセリングを提供しています。
ルーツ探し(出自を知る権利)
子どもには自分の出自を知る権利があり、成長に伴い実親について知りたいと思うことは自然なことです。あっせん機関は、子どもが将来ルーツを探したいと思ったときに情報提供ができるよう、記録を長期間保存しています。
養親同士のネットワーク
同じ経験を持つ養親同士のつながりは、養育の悩みを共有し、支え合う重要な場です。各地の養親会や支援団体が交流会や勉強会を開催しています。
普通養子縁組との違い
養子縁組には「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2種類があり、法的効果や手続きが大きく異なります。それぞれの特徴を正しく理解して検討しましょう。
主な違い
- 実親との関係:特別養子縁組では終了、普通養子縁組では存続
- 成立方法:特別養子縁組は家庭裁判所の審判、普通養子縁組は届出
- 養子の年齢:特別養子縁組は原則15歳未満、普通養子縁組は制限なし
- 養親の要件:特別養子縁組は夫婦共同、普通養子縁組は単身者も可
- 離縁:特別養子縁組は原則不可、普通養子縁組は協議により可能
- 戸籍の記載:特別養子縁組は「長男・長女」、普通養子縁組は「養子」
どちらを選ぶべきか
子どもの年齢、実親の状況、養親の家族構成など、さまざまな要素を考慮して選択します。子どもの福祉の観点からは、安定した親子関係を法的に確立できる特別養子縁組が推奨される場合が多いですが、状況に応じて普通養子縁組が適切な場合もあります。
いずれの場合も、児童相談所やあっせん機関、弁護士に相談し、子どもにとって最善の選択を検討してください。