流産・死産の支援ガイド 届出手続き・給付金・グリーフケア
流産・死産の定義
流産と死産は、妊娠の週数によって医学的・法律的に区分されます。この区分によって必要な届出や利用できる制度が異なるため、定義を正確に理解しておくことが重要です。
流産
妊娠22週未満で妊娠が終了した場合を「流産」と定義します。全妊娠の約15%に起こるとされ、その多くは妊娠12週未満の早期流産です。早期流産の原因の大半は胎児の染色体異常であり、母体の行動が原因ではありません。
死産
妊娠12週以降に胎児が死亡した状態で出産した場合を「死産」と定義します。このうち妊娠22週以降の死産は「後期死産」と呼ばれます。死産届の届出義務が生じるのは妊娠12週以降です。
人工死産
胎児に重篤な疾患が見つかった場合や、母体の健康上の理由による中期中絶(妊娠12週以降22週未満)も、届出上は「死産」として扱われます。
届出手続き
流産・死産の場合に必要となる届出は、妊娠週数によって異なります。手続きの漏れがないよう、医療機関と市区町村の窓口に確認しましょう。
妊娠12週未満の流産
法律上の届出義務はありません。医療機関での処置後、通常の通院で経過観察を受けます。母子健康手帳の返却義務もありません。
妊娠12週以降の死産
死産届の提出が必要です。死産後7日以内に、医師が作成した死産証書を添えて、市区町村の戸籍担当窓口に届け出ます。届出は父母のほか、同居者や出産に立ち会った医師も行うことができます。
火葬許可
妊娠12週以降の死産では、火葬許可証が必要です。死産届の提出と同時に火葬許可申請を行います。妊娠12週未満の流産では法律上の火葬義務はありませんが、医療機関が供養を行うのが一般的です。
出産育児一時金の適用
妊娠12週(85日)以降の死産・流産の場合、出産育児一時金を受け取ることができます。正常な出産と同様に健康保険から支給される制度です。
支給額
2023年4月以降、出産育児一時金は1児あたり50万円に引き上げられました。妊娠12週以降の死産の場合も同額が支給されます。
申請方法
直接支払制度を利用する場合は医療機関が手続きを代行しますが、分娩費用が50万円未満であった場合の差額は健康保険組合に申請して受け取ります。直接支払制度を利用しない場合は、被保険者が健康保険組合に直接申請します。
申請に必要な書類
- 出産育児一時金支給申請書
- 死産の場合:死産届の受理証明書または死産証書のコピー
- 医療機関の領収書
申請の時効は出産日の翌日から2年間です。手続きが遅れても期限内であれば申請可能です。
産休・傷病手当金
流産・死産の場合も、妊娠週数や就労状況に応じて、産前産後休業や傷病手当金を利用できる場合があります。
産後休業
妊娠12週(85日)以降の死産の場合、労働基準法に基づく産後休業(出産日の翌日から8週間)が適用されます。この期間は事業主が就業させてはならない期間と定められています。
出産手当金
健康保険の被保険者が産後休業を取得する場合、出産手当金が支給されます。支給額は標準報酬日額の3分の2相当です。妊娠12週以降の死産も支給対象です。
傷病手当金
流産による体調不良で就労できない場合、傷病手当金の対象となる可能性があります。医師の証明が必要で、連続して3日以上休業した場合に4日目から支給されます。支給額は標準報酬日額の3分の2相当です。
有給休暇の活用
妊娠12週未満の流産の場合は産後休業の対象外ですが、体調回復のために有給休暇を取得することは当然の権利です。また、生理休暇(労働基準法第68条)の適用を検討できる場合もあります。
グリーフケアの相談先
流産・死産は、保護者にとって深い悲しみ(グリーフ)をもたらす体験です。この悲しみは自然な反応であり、時間をかけて向き合うことが大切です。一人で抱え込まず、専門的なサポートを活用しましょう。
医療機関でのケア
近年、周産期の喪失を経験した方へのグリーフケアに取り組む医療機関が増えています。助産師や看護師によるカウンセリング、心理士による面談、自助グループの紹介などが行われています。出産した医療機関に相談してみましょう。
自助グループ・当事者団体
同じ経験をした方々が集まり、気持ちを共有する自助グループが各地で活動しています。対面での集まりだけでなく、オンラインでの交流会も増えています。全国的に活動する団体もあり、当事者同士のつながりが心の支えとなります。
心療内科・精神科
強い悲しみが長期間続き、日常生活に支障をきたす場合は、心療内科や精神科の受診を検討してください。不眠、食欲不振、強い罪悪感、抑うつ状態などが続く場合は、専門的な治療が必要な場合があります。
職場への対応
流産・死産後の職場復帰にあたっては、心身の回復状況に合わせて無理のないペースで進めることが重要です。職場の理解を得るための方法を整理します。
職場への報告
流産・死産の事実をどこまで職場に伝えるかは、個人の判断に委ねられます。上司や人事担当者には必要な範囲で伝え、休業制度の利用について相談しましょう。同僚への説明は本人の希望に基づいて行うのが適切です。
復帰時の配慮
職場復帰後も体調や精神面の波があることは自然です。男女雇用機会均等法に基づく「母性健康管理措置」により、医師の指導に基づく勤務時間の短縮や業務の軽減を求めることができます。
ハラスメントの防止
流産・死産に関する心無い発言や不当な取り扱いは、マタニティハラスメント(マタハラ)に該当する場合があります。不適切な対応を受けた場合は、事業所の相談窓口や都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。
次の妊娠に向けて
次の妊娠を希望する場合のタイミングについては、担当医と相談のうえ、心身が十分に回復してから検討することが大切です。焦る必要はありません。