児童相談所の役割と相談方法 189番通報と支援の流れ
児童相談所の概要
児童相談所は、児童福祉法に基づいて各都道府県および政令指定都市に設置される行政機関です。18歳未満の子どもに関するあらゆる相談を受け付け、専門的な調査・判定に基づいた援助を行います。2025年4月時点で全国に約230か所が設置されています。
児童相談所には児童福祉司、児童心理司、医師、保健師などの専門職が配置されており、子どもの安全確保と福祉の向上を使命としています。近年は虐待対応の最前線として注目されることが多いですが、養育困難、障害、非行、育成相談など幅広い役割を担っています。
相談できる内容
児童相談所で相談できる内容は多岐にわたります。虐待に関する通報や相談だけでなく、子育て全般の困りごとを受け付けています。
養護相談
保護者の病気、離婚、経済的困窮などにより子どもの養育が困難になった場合の相談です。養育環境の調整や施設入所、里親委託の検討を行います。
虐待相談
身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクト(養育放棄)に関する通告・相談です。緊急性が高い場合は一時保護などの介入措置を講じます。
障害相談
知的障害、発達障害、身体障害など、子どもの障害に関する相談です。療育手帳の判定や専門機関への紹介を行います。
非行相談
窃盗、暴力、家出などの非行行為に関する相談です。家庭裁判所との連携や自立支援施設への入所を検討する場合もあります。
育成相談
不登校、家庭内の問題行動、しつけの悩みなど、子どもの育成に関する幅広い相談です。心理判定や助言指導を通じて家庭を支援します。
189番(いちはやく)通報
「189」は児童相談所への通告・相談を行うための全国共通の電話番号です。「いちはやく」と覚えることができ、24時間365日対応しています。通話料は無料で、発信元の地域を管轄する児童相談所に自動的に接続されます。
児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)では、虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合、すべての国民に通告義務が課されています。確証がなくても「もしかして」と感じた段階で通告して構いません。通告者の個人情報は厳格に保護されます。
189番に電話するとどうなるか
- 自動音声ガイダンスの後、管轄の児童相談所に接続
- 相談員が状況を聴き取り(子どもの様子、場所、頻度など)
- 緊急性を判断し、必要に応じて48時間以内の安全確認を実施
- 通告内容が間違いであっても、通告者に不利益は生じない
支援から保護までの流れ
児童相談所が通告や相談を受理した後の対応は、状況の緊急性に応じて段階的に行われます。
受理・調査
通告を受理すると、児童福祉司が家庭訪問や関係機関(学校、保育所、医療機関など)への聞き取りを行い、子どもの安全と家庭環境を調査します。緊急性が高い場合は48時間以内に子どもの安全確認を行います。
援助方針の決定
調査結果をもとに、児童相談所内の会議で援助方針を決定します。在宅での支援で対応可能な場合は、継続的な見守りや指導、関係機関との連携によるサポートを行います。
一時保護の判断
子どもの安全が確保できないと判断された場合、児童相談所長の権限で一時保護を行います。保護者の同意がなくても実施できる行政処分であり、子どもの生命・安全を最優先に判断されます。
措置の決定
一時保護の後、家庭復帰が可能と判断されれば在宅指導に切り替えます。家庭復帰が困難な場合は、児童養護施設への入所や里親への委託などの措置を講じます。
一時保護の仕組み
一時保護とは、子どもの安全を緊急に確保する必要がある場合に、児童相談所が子どもを一時的に保護する措置です。一時保護所または委託先(里親、児童福祉施設など)で生活することになります。
一時保護の期間
原則として2か月以内とされていますが、やむを得ない事情がある場合は延長されることもあります。2024年の児童福祉法改正により、一時保護開始時に裁判所の審査(一時保護状)を経る仕組みが導入され、子どもの権利保障が強化されました。
一時保護中の生活
一時保護所では、食事・衣服・学習機会が提供されます。学校への通学は安全上の理由から制限される場合がありますが、学習支援員による個別指導が行われます。心理的なケアも児童心理司が継続的に実施します。
保護者との関係
一時保護中も、児童相談所は保護者に対して状況説明と今後の方針について協議を行います。保護者支援プログラムへの参加を促し、家庭環境の改善を図ります。
児童相談所の課題と改革
児童相談所の虐待相談対応件数は年々増加しており、2023年度は約22万件に達しました。相談件数の増加に対して職員数や施設の整備が追いついていないことが構造的な課題となっています。
人材確保と専門性の向上
児童福祉司の配置基準は段階的に引き上げられており、国は2024年度までに約6,850人体制を目標としていました。新たに創設された「こども家庭ソーシャルワーカー」資格により、専門性の向上も図られています。
市区町村との役割分担
2024年の改正では、市区町村に「こども家庭センター」の設置が努力義務化されました。身近な相談は市区町村が担い、専門的・高度な対応を児童相談所が行うという役割分担が進められています。
第三者評価と透明性
児童相談所の対応に関する第三者評価の仕組みや、重大事案における検証制度の充実が求められています。子どもの死亡事例の検証(CDR:チャイルド・デス・レビュー)の制度化も進められています。