里親制度とは 種類・条件・手続き・支援内容を解説
里親制度の概要
里親制度は、さまざまな事情により家庭で暮らすことができない子どもを、自治体から委託を受けた家庭(里親)が養育する児童福祉の制度です。児童福祉法に基づき、都道府県および政令指定都市が実施主体となっています。
日本では、家庭で暮らせない子ども(社会的養護を必要とする子ども)は約4万2,000人おり、そのうち里親やファミリーホームで養育されている子どもは約25%です。政府は「新しい社会的養育ビジョン」のもと、里親委託率の向上を重要な政策目標としています。
里親制度は子どもの最善の利益を守るための制度であり、特定の大人との安定した愛着関係のなかで子どもが健やかに成長することを目的としています。
里親の種類
里親には、養育の目的や期間に応じて4つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った形態を検討しましょう。
養育里親
最も一般的な里親の形態です。家庭で暮らせない子どもを一定期間養育します。養育期間は数週間から長期間まで子どもの状況に応じてさまざまです。子どもが家庭に戻れるようになるまで、または自立するまで養育を続けます。
専門里親
虐待を受けた子どもや障害のある子ども、非行のある子どもなど、専門的な知識と技術を必要とする子どもを養育する里親です。養育里親としての経験や専門研修の修了が登録要件となります。
養子縁組里親
養子縁組を前提として子どもを養育する里親です。特別養子縁組の成立を目指す場合が多く、縁組が成立するまでの養育期間中は里親として扱われます。
親族里親
両親が死亡、行方不明、拘禁などの理由で養育できない場合に、祖父母やおじ・おばなどの親族が里親として養育する形態です。子どもにとって馴染みのある大人のもとで生活を継続できる利点があります。
登録条件と手続き
里親になるための条件は法律で定められていますが、特別な資格は必要ありません。子どもの養育に対する理解と熱意があり、経済的に安定した家庭環境があれば、幅広い方が里親として登録できます。
主な登録要件
- 心身ともに健全であること
- 子どもの養育について理解と熱意を有すること
- 経済的に困窮していないこと
- 児童福祉法等に定める欠格事由に該当しないこと
- 同居する家族の理解が得られていること
登録までの流れ
- 児童相談所またはフォスタリング機関に問い合わせ・相談
- 里親制度説明会への参加
- 基礎研修の受講(座学・施設実習)
- 登録前研修の受講
- 家庭調査(家庭環境の確認、面接)
- 児童福祉審議会の審議
- 里親名簿への登録
申請から登録までには概ね6か月から1年程度かかります。登録後、すぐに子どもが委託されるとは限らず、子どもとの相性や受入れ態勢を考慮したマッチングが行われます。
研修内容
里親として子どもを適切に養育するために、登録前と登録後にさまざまな研修が用意されています。研修を通じて、子どもの発達や心理、社会的養護の理念について理解を深めます。
基礎研修
里親制度の概要、子どもの権利、社会的養護の現状について学ぶ入門的な研修です。講義に加え、児童養護施設や乳児院での実習が含まれます。実習では施設で生活する子どもたちと接する機会があり、養育のイメージを具体化できます。
登録前研修
基礎研修の後に受講する、より実践的な研修です。子どもの発達と心理、養育上の課題への対応、実親との関係、自立支援など、具体的なテーマについて学びます。グループワークやロールプレイを通じた演習も行われます。
更新研修
里親登録の有効期間は5年で、更新時に研修の受講が求められます。最新の制度や養育技術について学び、里親としてのスキルを継続的に向上させます。
専門研修
専門里親を目指す場合は、通常の研修に加えて、虐待を受けた子どもへのケア、障害児の養育、思春期の子どもへの対応などに関する専門的な研修を受講する必要があります。
里親手当と支援
里親には、子どもの養育に必要な経費として里親手当と一般生活費が支給されます。養育にかかる経済的負担を軽減し、安定した養育環境を確保するための仕組みです。
支給される手当・経費
- 里親手当:養育里親は月額90,000円(1人目)、専門里親は月額141,000円(1人目)
- 一般生活費:乳児は月額約60,110円、乳児以外は月額約52,370円
- 教育費:学校教育に必要な費用の実費
- 医療費:公費負担(里親委託児は医療費が無料)
フォスタリング機関による支援
フォスタリング機関(里親養育包括支援機関)は、里親のリクルートから養育支援までを一貫して行う機関です。定期的な家庭訪問、電話相談、レスパイトケアの調整、里親同士の交流会の開催など、きめ細かな支援を提供します。
里親サロン
同じ立場の里親同士が集まり、養育の悩みや喜びを共有する場です。先輩里親からのアドバイスを受けたり、孤立を防いだりする効果があります。各地のフォスタリング機関や里親会が開催しています。
養育の実際
里親としての養育は、通常の子育てと共通する部分も多いですが、子どもの背景や特性に応じた特別な配慮が必要な場面もあります。
委託初期の対応
子どもが里親家庭に来たばかりの時期は、新しい環境への適応が最大の課題です。試し行動(わざと困らせるような行動)が見られることもありますが、これは子どもが安心できる環境かどうかを確認する行為です。安定した対応を心がけ、時間をかけて信頼関係を築きましょう。
実親との関係
多くの場合、子どもには実親がおり、面会交流が行われることがあります。子どもにとって実親は大切な存在であり、里親は実親の存在を否定せず、子どもの気持ちに寄り添うことが重要です。面会交流は児童相談所の指導のもとで行われます。
自立に向けた支援
子どもが18歳(措置延長の場合は20歳、2024年の改正により22歳年度末まで)に達すると、里親委託は終了となります。進学や就職に向けた準備を早い段階から始め、社会に出た後も頼れる関係を維持することが望まれます。