育休の取り方ガイド 期間・手続き・給付金を詳しく解説
育児休業制度の概要
育児休業(育休)は、子どもを養育する労働者が、育児・介護休業法に基づいて取得できる休業制度です。男女を問わず取得でき、労働者が申し出た場合、事業主は原則として拒否することができません。
育児休業は1992年に法制化され、その後数回の改正を経て現在の制度に至っています。特に2022年の改正では、産後パパ育休の創設や育休の分割取得が可能になるなど、大幅な拡充が行われました。
育児休業の基本的な仕組み
育児休業は、子どもが1歳になるまでの間に取得できる休業です。休業中は事業主に給与を支払う義務はありませんが、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されるため、一定の収入は確保されます。また、休業中の社会保険料(健康保険・厚生年金)は労使ともに免除されます。
取得条件と期間
育児休業を取得するための条件と、休業できる期間を確認しましょう。
取得できる人
原則として、1歳未満の子どもを養育するすべての労働者が育児休業を取得できます。正社員だけでなく、契約社員やパートタイム労働者も対象です。2022年4月の改正により、有期雇用労働者の取得要件が緩和され、「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃されました。
ただし、以下の労働者は労使協定により対象外とすることが可能です。
- 入社1年未満の労働者
- 申出の日から1年以内(1歳6か月または2歳までの育休の場合は6か月以内)に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
休業期間
育児休業は原則として子どもが1歳になるまで取得できます。2022年10月の改正により、育休を2回に分割して取得することが可能になりました。
- 原則:子どもが1歳になるまで(分割して2回取得可能)
- 延長1回目:保育園に入れないなどの事情がある場合、1歳6か月まで延長可能
- 延長2回目:1歳6か月時点でもなお保育園に入れない場合、2歳まで延長可能
パパ・ママ育休プラス
両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2か月になるまで育休を延長できる制度です(ただし、1人あたりの取得可能期間は1年間が上限)。夫婦で交代しながら育休を取得するなど、柔軟な育児分担が可能になります。
産後パパ育休(出生時育児休業)
2022年10月に新設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間の休業を取得できる制度です。通常の育児休業とは別に取得でき、男性の育休取得を促進する目的で設けられました。
産後パパ育休の特徴
- 対象期間:子どもの出生後8週間以内
- 取得可能日数:最大4週間(28日)
- 分割取得:2回まで分割可能(初めにまとめて申し出る必要あり)
- 申出期限:休業開始の2週間前まで(通常の育休は1か月前)
- 就業:労使協定を締結している場合、休業中に一定の範囲で就業可能
通常の育休との違い
産後パパ育休と通常の育児休業は別の制度として位置づけられており、両方を取得できます。例えば、出産直後に産後パパ育休を4週間取得し、その後通常の育児休業を取得する(最大2回に分割可能)ことで、男性は合計で最大3回に分けて休業を取ることが可能です。
休業中の就業について
産後パパ育休の大きな特徴のひとつが、労使協定を締結している場合に限り、休業期間中に一定の範囲で就業できることです。就業可能な上限は、休業期間の所定労働日数の半分まで、かつ所定労働時間の半分までとされています。
これにより、完全に仕事を離れることが難しい場合でも、部分的に休業を取得しやすくなっています。ただし、就業は労働者が希望する場合のみ認められるものであり、事業主から就業を強制することはできません。
育児休業給付金の計算
育児休業中の収入を支える「育児休業給付金」について、支給要件や計算方法を詳しく解説します。
支給要件
育児休業給付金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険に加入していること
- 育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(または就業時間が80時間以上の月)が12か月以上あること
- 育児休業期間中の就業日数が各支給単位期間(1か月)ごとに10日以下(または就業時間が80時間以下)であること
支給額の計算方法
育児休業給付金の支給額は、休業開始時の賃金日額をもとに計算されます。
- 育休開始から180日目まで:休業開始時賃金日額 x 支給日数 x 67%
- 181日目以降:休業開始時賃金日額 x 支給日数 x 50%
「休業開始時賃金日額」とは、育休開始前6か月間の賃金総額を180で割った金額です。賞与は含まれません。
具体的な計算例
月給30万円の場合を例に計算してみましょう。
- 賃金日額:30万円 x 6か月 / 180日 = 10,000円
- 育休開始から180日目まで:10,000円 x 30日 x 67% = 約201,000円/月
- 181日目以降:10,000円 x 30日 x 50% = 約150,000円/月
支給額の上限と下限
育児休業給付金には上限額と下限額が設定されています(毎年8月に改定)。2024年度の上限額は、67%支給期間で月額約31万円、50%支給期間で月額約23万円です。下限額も設定されており、賃金が低い場合でも一定の給付が保障されています。
産後パパ育休の給付金
産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合も、「出生時育児休業給付金」が支給されます。支給額は休業開始時賃金日額の67%です。通常の育児休業給付金とは別に支給されます。
2025年度からの給付率引き上げ
2025年4月から、両親がともに14日以上の育児休業を取得した場合、育休開始から28日間は給付率が80%に引き上げられる制度(出生後休業支援給付)が開始されました。社会保険料の免除と合わせると、この期間は実質的に手取り10割が確保されることになります。
職場への申請手続き
育児休業を円滑に取得するためには、計画的に手続きを進めることが大切です。申し出から復帰までの流れを確認しましょう。
育休取得までの流れ
- 妊娠が判明したら、まず直属の上司に報告する
- 会社の育休制度や就業規則を確認する
- 育児休業の取得時期と期間を検討する
- 休業開始予定日の1か月前まで(産後パパ育休は2週間前まで)に書面で申し出る
- 業務の引き継ぎを行う
- 育児休業開始
申出に必要な事項
育児休業の申出書には、以下の事項を記載する必要があります。
- 申出の年月日
- 労働者の氏名
- 子どもの氏名、生年月日、続柄(出産前の場合は出産予定日)
- 休業開始予定日と休業終了予定日
事業主の義務
2022年4月の改正により、事業主には以下の義務が課されています。
- 妊娠・出産の申し出をした労働者に対して、育児休業制度の内容を個別に周知すること
- 育児休業の取得意向を確認すること
- 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修の実施、相談窓口の設置など)
事業主が育児休業の申し出を拒否したり、育休を取得したことを理由に不利益な取り扱い(解雇、降格、減給など)をしたりすることは法律で禁止されています。
育児休業給付金の申請
育児休業給付金の申請は、原則として事業主が本人に代わってハローワークに行います。初回の申請は育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで、以降は2か月ごとに追加申請が必要です。申請に必要な書類は事業主が準備するのが一般的ですが、制度や手続きの内容は本人も理解しておきましょう。
育休中に知っておきたいこと
育児休業中の生活や、復帰に向けて知っておくべきことをまとめました。
社会保険料の免除
育児休業中は、申出により健康保険と厚生年金の保険料が労使ともに免除されます。免除された期間も保険料を納めた期間として扱われるため、将来の年金額には影響しません。免除を受けるためには、事業主が年金事務所に届出を行う必要があります。
2022年10月から免除要件が見直され、月末時点で育休を取得している場合に加え、同一月内に14日以上の育休を取得した場合も免除の対象となりました。賞与に係る保険料は、1か月超の育休を取得している場合に免除されます。
住民税の支払い
育児休業中も住民税の支払いは必要です。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、育休に入った年は休業前の所得に対する住民税が発生します。給与からの天引きができなくなるため、普通徴収に切り替わり、自分で納付する必要がある場合があります。事業主に確認しておきましょう。
育休中の副業・就業
育児休業中の就業については、育児休業給付金の支給との関係で注意が必要です。各支給単位期間(1か月)ごとに就業日数が10日以下、かつ就業時間が80時間以下であれば、給付金は全額支給されます。これを超えると給付金が減額または不支給となる場合があります。
保育園の申し込み
育休からの復帰を見据えて、保育園の申し込みは計画的に行いましょう。4月入園を希望する場合、多くの自治体では前年の10月から12月頃に申込受付を行います。人気の園は倍率が高いため、第二希望、第三希望も含めて複数の園を検討しておくことが大切です。
復帰後の働き方
育休から復帰した後も、子育てと仕事を両立するための制度があります。
- 短時間勤務制度:3歳未満の子どもを養育する労働者は、1日の所定労働時間を6時間に短縮できる
- 所定外労働の制限:3歳未満の子どもを養育する労働者は、残業を免除される
- 子の看護等休暇:小学校就学前の子ども1人につき年5日(2人以上は年10日)の看護休暇を取得できる
- 時間外労働の制限:小学校就学前の子どもを養育する労働者は、時間外労働を月24時間、年150時間に制限できる