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EDITORIAL

出産祝い金100万円の自治体は本当におトクなのか — 編集部が10年試算してみた

2026年4月8日 公開
編集部 ながやま
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きっかけは読者からの一通のメール

先日、こんなお問い合わせをいただきました。「第3子で100万円の出産祝い金を出している町を見つけました。今住んでいる東京の23区から引っ越したほうがいいですか?」

気持ちはとてもよくわかります。100万円という数字のインパクトは大きい。でも編集部としては、感覚ではなくちゃんと数字で答えたいと思いました。そこで、家賃・通勤・医療費・教育費まで含めて10年スパンで試算してみることにしました。

この記事はその検証レポートです。読者の方が引っ越しを判断するときの材料になれば幸いです。

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前提条件を決める

試算するためには前提が必要です。今回は以下の家庭をモデルケースとしました。

  • 夫婦+子ども3人(第3子が新生児、上は5歳と3歳)
  • 夫の勤務地は東京駅周辺(リモート週3日)
  • 3LDKマンションを賃貸
  • 10年後(第3子が小学生になるまで)の累計コストを比較

比較するのは、東京都江東区(出産祝い金なし、医療費高校3年まで)と、仮に「A町」とする地方自治体(第3子100万円、医療費中学3年まで、東京駅まで通勤2時間)です。A町は実在する自治体をモデルにしていますが、特定を避けるために匿名化しています。

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プラス側: A町で得られる金額

  • 第3子出産祝い金: 100万円(一括)
  • 家賃差額: 江東区の3LDKは月額18万円前後、A町は8万円前後。差額10万円 × 12か月 × 10年 = 1,200万円
  • 合計プラス: 約1,300万円

こうして並べると圧倒的に見えます。1,300万円も浮くなら引っ越し一択じゃないか、と。

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マイナス側: 見落とされがちな費用

でも、ここからが本題です。A町に住むことで増えるコストがあります。

1. 通勤費

東京駅まで2時間ということは、新幹線通勤の可能性が高いです。月の定期代は会社負担にできても、家族で都内に出るときの交通費が膨らみます。週末1回4人で都内に出るとして、片道4,000円×4人×往復×52週 = 166万円/10年

2. 通勤時間という見えないコスト

夫が往復4時間を週2日通勤するとして、年間で約400時間。10年で4,000時間。これを「労働時間」とみなすと、時給2,500円換算で1,000万円分の機会損失です。家族と過ごせない時間でもあります。

3. 医療費の差

江東区は高校3年まで医療費無料、A町は中学3年まで。子ども3人が中学卒業後の3年間、それぞれ月平均5,000円の医療費がかかるとして、5,000円×12か月×3年×3人 = 54万円

4. 教育・習い事の選択肢

これは数字にしにくいですが、塾・習い事の選択肢、中学受験を選ぶ余地、英会話スクールの数など、A町だと選択肢が大きく狭まります。代替手段としてオンライン教材を多用するとして、月1万円増として120万円/10年

5. 第3子の出産に伴う一時引っ越しコスト

転居費用、家具の入れ替え、転入後の各種手続きで、現実的に50〜80万円はかかります。

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差し引きの結果

プラス側の合計1,300万円 − 機会損失を除いたマイナス側の合計(166+54+120+80=)約420万円 = 約880万円のプラス

機会損失(1,000万円)まで含めると、ほぼ相殺、もしくはわずかにマイナスです。

ここで重要なのは、「家賃の安さ」が圧倒的に効いていることです。出産祝い金100万円は実は副次的で、本当の経済効果は家賃差額のほうにあります。同じ理屈なら、出産祝い金はゼロでも家賃が安い地方都市はすべて「経済的にお得」になります。

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編集部の結論

出産祝い金100万円という数字に惹かれるのは自然です。でも、家計に効くのは「フロー(毎月の住居費・通勤費)」であって、「ストック(一度きりのボーナス)」ではありません。10年スパンで考えたら、毎月10万円安い家のほうが、100万円もらうよりずっと効きます。

そして、お金以外の要素(家族と過ごす時間、子どもの選択肢、自分の働き方)も同じくらい大事です。これは試算では出てきません。

今回のケースで言えば、私の個人的な答えは「東京近郊で家賃が比較的安い場所(千葉・埼玉の都心アクセスがいいエリア)に引っ越すのが、もっとも合理的」になりました。読者からのお問い合わせに対しても、そう返信しました。

もし同じように引っ越しを検討している方がいたら、当サイトの比較ツールで複数自治体を並べて、家賃と医療費と祝い金をセットで見てみてください。「数字のいちばん大きい1項目」だけで判断しないことが、後悔しない選び方だと思います。

こそだてくらべ編集部